SSブログ

技術書の翻訳 [技術書の翻訳]

「Engineer Mind, Vol.9」(技術評論社)に、高嶋優子さんの「翻訳に学ぶ --- 伝える英語力・日本語力」と題した記事が書かれていました。一部引用すると、
質が悪く、誤植の多い訳書があるのも確かですが、それを非難ばかりしていても仕方ありません。実際、技術書の翻訳はそう簡単にできるものではないのです。英語力はもちろん、ドメインの知識、日本語力、さらに、体力も気力も必要とされる作業です。
さらに、
技術翻訳は、報酬だけをモチベーションに「バイト」として続けられる作業ではないのです。技術翻訳に携わる者のはしくれとして、この業界で翻訳に携わっている人たちは、あくまでも「趣味」だと考えて楽しみながら、さらに、ほかの人にもこの本を読んでもらいたいという想いを持ちながら訳しているのだという点を、読者の方々には理解してもらいたいと感じています。
一冊の技術書を翻訳するというのは、昼間は仕事をしていると、気力が必要なのは確かです。それも、非常に地道な作業が何ヶ月も続きます。数ヶ月で終わることはなく、一年以上の長丁場になることもあります。実際、『プログラミング言語Java第4版』の翻訳には、一年半を要しました。翻訳に先立って英語の原稿のレビューも行ったので2年間ぐらいは、この一冊にプライベートな時間の多くを費やしたことになります。

自分が読んでも非常に良い内容であれば、高嶋さんも述べているように、多くのソフトウェア技術者に読んでもらいたいと想いながら翻訳します。最初に翻訳した『プログラミング言語Java第3版』は、実は第2版が翻訳されておらず、Java技術者にとっては必須の技術書が翻訳されていないのは残念である旨の記事を執筆したことから翻訳することになりました。初めての翻訳でもあり、翻訳している一年間は、他の技術書を読む余裕は全くありませんでした。

翻訳を終えて一息入れて読み始めたのがJoshua Bloch氏の『Effective Java Programming Language Guide』です。この本は、非常に衝撃的な内容でした。それまで自分自身のプログラミングに対する知識がいかに貧弱であるかを痛感した次第です。幸い、『Effective Javaプログラミング言語ガイド』として翻訳して出版することができましたし、現在は第2版の英語の原稿のレビューにも参加しています。第2版の翻訳が出た時には、多くのソフトウェアエンジニアに読んでもらいたいと思っています。

高嶋さんも記事の中で述べられていますが、ボランティアとして翻訳原稿をレビューしてくれる人達がいなければ、翻訳書を出すことはできません。私自身も何人かの知り合いにレビューアーを募集して、レビューを行ってもらっています。翻訳書が無事に出版された時は、ささやかながらレビューアーの人達を招待して感謝パーティを開催していますし、著者が来日する予定がある時は著者の来日に合わせて感謝パーティを開いたりしています。
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 2

たーとる

私自身、結構疲れるよな~と思いながら原書を読んでいますが、翻訳となるとやはり気を使いますよね。他人にどうわかりやすい文章にするか。場合によっては意訳もしなければならない。
そんな努力のおかげで私たちは多数の翻訳本を読ませていただけるわけで。

本当にみなさんに感謝しなければなりませんね。
by たーとる (2008-03-10 16:38) 

Yoshiki

たーとるさん、

英語でも(翻訳を含む)日本でも、技術書をきちんと読むのは結構大変です。特に英語で読む場合には、英語が理解できないと、何を言っているのか分からなかったりします。英語を理解した上で、その言っている技術内容を理解しなければなりませんから、やはり、技術書を読むというのは大変な作業かもしれません。
by Yoshiki (2008-03-11 05:19) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

トラックバック 0