訳者あとがき『Linuxシステムの仕組み』 [訳者まえがき・あとがき]
スーパーユーザーなら知っておくべきLinuxシステムの仕組み
- 出版社/メーカー: インプレス
- 発売日: 2022/03/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
Linuxは、組み込みシステムからウェブサービスまで多くのシステムで使われています。そのため、ソフトウェア開発では、避けて通れないオペレーティングシステムになっています。今日では、ウェブサービスの多くがLinuxに基づくコンテナ技術に依存しており、開発マシンとして使っていなくても、間接的にLinuxを使っていることになります。
この本は、Linuxを使う上で知っておくべき知識を説明しています。この本で説明されている以上の詳細を知りたい場合、各章で紹介されている書籍やマニュアルページでさらに学ばれるとよいかと思います。Linuxカーネル内の仕組みについては、それだけで一冊の本になってしまうので、詳細には説明されていません。カーネルの仕組みに興味があれば、カーネルを解説した書籍を読まれることをお勧めします。
私自身は、1984年に社会人として働き始めてから、BSD 4.2/4.3、Idris、System V、SunOS、SolarisとさまざまなUnixを開発用としてだけではなく、製品のオペレーティングシステムとして使いました。Linuxも二つの組み込みシステムの開発で使いました。今日では、ソフトウェア開発にはUnixの系統の一つであるmacOSを使ってウェブサービスを開発しています。そのウェブサービスもクラウドのプラットフォーム上のKubernetes(17.2.4節)を使っています。また、Windowsであっても、WSL(Windows Subsystem for Linux)を使うことができます。その結果として、今日では、さまざまなプラットフォーム上で、Linuxを含むUnix系統のオペレーティングシステムやコマンドを使うことができます。
私がUnixを使い始めた頃は、Unixの機能は限られていました。たとえば、スレッド、共有ライブラリ、mmap
システムコール、TCP/IPのプロトコルスタックといったものはなく、プロセス間通信はfork/exec
した親プロセスと子プロセス間でのパイプだけでした。その後、さまざまな機能が追加されて、Linuxにも引き継がれています。一方で、30年以上慣れ親しんだUnixのコマンドは、現在でもその多くがソフトウェア開発で役立っています。Linuxの機能は拡張され続けていきますが、この本で説明されている基本的な事柄は、その多くが陳腐化することはないと思います。そして、皆さんのソフトウェア開発で役立ち続けると思います。
多くのソフトウェアエンジニアにとって、この翻訳本が日々のソフトウェア開発を支える知識の獲得に役立てば幸いです。
2022-04-26 16:46
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