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訳者あとがき『アプレンティスシップ・パターン』 [プログラマー現役続行]

アプレンティスシップ・パターン ―徒弟制度に学ぶ熟練技術者の技と心得 (THEORY/IN/PRACTICE)

アプレンティスシップ・パターン ―徒弟制度に学ぶ熟練技術者の技と心得 (THEORY/IN/PRACTICE)

  • 作者: Dave H. Hoover
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2010/07/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
訳者あとがき

 2002 年初めにSoftware Craftsmanship(『ソフトウェア職人気質』)を読んだのは、私が42 歳の時でした。大学で情報工学を専攻し、社会人となってから、すでに18 年が経過していました。会社内の立場は管理職であり、それまでの約4 年間は、技術教育、設計レビュー、コードレビューを行ってはいましたが、自分自身でプログラミングを行いソフトウェアを開発することはありませんでした。『ソフトウェア職人気質』を読んで決断したことは、もう一度現場に留まるために、2 度目の米国駐在を受け入れることでした。残念ながら2 度目の米国駐在は、プロジェクトの中止により短期で終わってしまいましたが、私にとっては転機でした。
 帰国してからの約5年間は、管理職という立場で、自分自身で設計・実装・デバッグまで行いながら、テスト駆動開発を行い、直接ソフトウェア開発に従事してきました。その一方で、若手の育成のために、部門全体を職人育成の場として、活動を行ってきました。振り返ってみるとアプレンティスを育て、短期間にジャーニーマンにするために、自分なりに考えたカリキュラムを実行していました。
 私自身が勉強会を主催することで、継続した読書の習慣を身に付けてもらうようにし、最初の言語としてJava 言語をきちんと学んでもらうために『プログラミング言語Java』および『Effective Java』を使用した教育を毎年行ってきました。本書がもっと早く出ていれば、職人を育成するための私のカリキュラムも、もっと良くなっていたかもしれません。
 本書には、ソフトウェア開発に従事して、これから貴重な人生を費やすための若い人々へのアドバイスが多く含まれています。私が就職した頃に本書や『ソフトウェア職人気質』の書籍があれば、今までの人生は違っていたかもしれません。私自身は、非常に遠回りしながら、長い道のりを歩んできたと思います。翻訳するだけでなく、自分の経験と照らし合わせながら、色々と考えさせられることが多い内容でした。
 本書は、これから熟練職人になることを目指す若い人々だけでなく、長年ソフトウェア開発に従事してスキルを伸ばしてきた人達にも読んでもらいたい内容です。現場の若手の育成は自分の仕事ではないと考えるのではなく、若手の育成も長い道のりを歩ませるために続けなければならない活動であると認識する必要があります。
 この日本語版が、日本での若手ソフトウェア技術者にとって、長い道のりを歩む上でガイドとなれば幸いです。そして、私自身もさらに歩み続けたいと思っています。

訳者あとがき『アプレンティスシップ・パターン』
ソフトウェア職人気質―人を育て、システム開発を成功へと導くための重要キーワード (Professional Computing Series)

ソフトウェア職人気質―人を育て、システム開発を成功へと導くための重要キーワード (Professional Computing Series)

  • 作者: ピート マクブリーン
  • 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
  • 発売日: 2002/03
  • メディア: 単行本