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書籍『ご機嫌な職場』 [本]

ご機嫌な職場

ご機嫌な職場

  • 作者: 酒井穣
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2011/08/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

副題として”「職場コミュニティ」再構築の方法”と書かれています。第一章「ご機嫌な職場はなぜ失われたか」では、職場コミュニティがなぜ弱体化したかを説明されており、そこには技術の進歩が職場コミュニティを破壊すると説明されています。そして、次のように述べられています。
インターネットは、本質的に、物理的な距離の意味を破壊する技術です。
私が就職した1984年はコミュニティといえば職場しかありませんでした。就職してから結婚するまでは、妻とは手紙をやりとりし、話をする時は独身寮の公衆電話を利用という時代でした。当然、大学の同級生が就職した先でどのような仕事をしたり生活をしているかは、学会とかで会った時にしか知ることができませんでした。職場および家庭がコミュニティだったと言える時代です。

そのようなコミュニティである職場、つまり、会社というコミュニティを大切にするために、会社は多くのサポートをしてくれました。会社が補助する社員クラブ(飲み屋)があったり、職場での懇親会費用が部門に支給されて、家族も含めて相模湖にバスツアーに行ったり、ロサンジェルス駐在時代にはカタリナ島へ帆船で駐在員の家族で行ったこともあります。

一方、技術の発達により、私が就職した頃とは全く違う時代となっています。ブログ、Twitter、mixi、facebookなどのソーシャルネットワークによるコミュティがあります。さらに、技術的な勉強会も今ではかなり盛んになっており、そのような勉強会を通して、職場とは違う人達と接するコミュニティも存在します。今は、誰もがどれかのコミュティに属している時代です。また、会社も職場単位の懇親会費用ではなく、カフェテリアポイント制などのように、直接個人に支給するようになっています。

つまり、職場だけがコミュニティという時代は完全に終わっているのです。その結果として、個人にとっては職場コミュニティは、その人のコミュニティ全体の一部にしか過ぎなくなっています。結果として、職場コミュニティが弱体化している訳です。

本書の「はじめに」は、次のように述べられています。
 どうせ仕事をするなら、明るい職場がいい。

 いよいよ、この考え方が「間違い」であることが明確になりつつあります。
 明るい職場の意義は「どうせ仕事をするなら」というような小さなレベルではなく、経営にとって最重要課題になりつつあるからです。絶対に明るい職場をつくる必要があるのです。
といことで、本書は、以下の3章から構成されています。
第1章 ご機嫌な職場はなぜ失われたか
第2章 ご機嫌な職場をつくるために
第3章 ご機嫌な職場のつくり方
面白いなと思ったのは、職場でのコミュニケーションの活性化のためのオフィスレイアウトに関する説明が少しだけ述べられています。マネージャができるだけ多く歩いてコミュニケーションを取るために、「マネージャとアシスタントの位置を離す」とか「マネージャと共有スペースを離す」とかです。しかし、話かけることが少ないマネージャでは、いくら歩き回っても非公式なコミュニケーションは活発化しないし、マネージャのアシスタントの席はマネージャの席に近いことが多いのではないでしょうか。

もう一つ面白いと思ったのは、懇親会(飲み会)の重要性について頁を割いていることです。私自身の経験からすると、車通勤をしていた職場(徳島と米国)を除いて、コミュニケーションの場としては懇親会は重要な役割を果たしていると思います。今の職場(狭い意味での同じ部署)の飲み会は、前職と比べると激減しており(その分、肝臓には良いことですが)、それが反映されているのかどうかは定かではありませんが職場コミュニティは弱いと感じています。今は、職場コミュニティの懇親会よりも、組織を越えたコミュニティ(自発的な勉強会、Java研修など)の懇親会の方が多くなっています。